ピルの使用率が低い日本では、アフターピルの存在すら知らない女性がまだまだ多いのですが、アフターピル(緊急避妊薬)は持っているだけで安心できる道具です。日本で最も多く使用されている避妊具はコンドームですが、コンドームは破れたり脱げたりする恐れがあり、そのようなトラブルが起こった場合の避妊失敗率は15%にも及ぶのです。
日本で最も使用されているアフターピルといえば「ノルレボ錠」です。2010年に厚生労働省の薬事分科会により承認され、2011年より国内の一部の産婦人科やレディースクリニックで取り扱われています。
アフターピルの需要は結構高いようで、通常は性行為後の72時間以内に服用する必要があるため、慌てて病院に駆け込む女性が多いようです。アフターピルは高用量ピルに当てはまりますが、アフターピルが導入される以前は、緊急避妊時には中用量ピルが用いられていました。ただ中用量ピルは副作用が強いという理由で、現在ではアフターピルでの緊急避妊が主流です。
ノルレボ錠の特許が満了を迎えたことで、近年ジェネリック医薬品が登場しています。なかでもノルレボ錠と同じ効果を得られるのに価格がとても安いのが「アイピル」です。インドの製薬会社によって発売されたアイピルは、1錠服用するだけで高い避妊効果を得ることができます。
一方で、「性行為から72時間以内に服用しなければいけない」というアフターピルの常識を覆すアフターピルがトルコの製薬会社から発売されました。それが「エラ(ella
)」というお薬です。エラは性行為から120時間(5日)以内に服用することで、事後避妊をすることができるのです。
今回は、日本でも需要の高いノルレボ錠のジェネリック医薬品である「アイピル」と、より余裕を持って服用できる「エラ」の比較をしてみようと思います。
アイピルvs.エラ:製薬会社
アイピルとエラはそれぞれ別の製薬会社が製造・販売を手掛けています。
アイピル:シプラ社
アイピルは、インドの「シプラ」という製薬会社で製造されています。シプラ社はこれまでにアフターピルだけでなく、ED治療薬や喘息治療薬など、数々のジェネリック医薬品を発売してきたので、海外のジェネリック医薬品を使用したことのある方は、「Cipla」という表記を目にしたことがあるかもしれません。
シプラはインドでも有数の一流会社のひとつで、FDA(アメリカ食品医薬品局)の許認可機関にも登録されています。従業員数は1万6千人以上で、製薬会社としては非常に大きな企業ではないでしょうか。なお、2016年に行われたWHO(世界保健機関)の調査によると、シプラの工場はWHOの品質管理基準(GMP)を満たしているそうで、厳しい管理のもと、医薬品が製造されていることが分かります。
エラ:アブディ・イブラヒム社
アブディ・イブラヒム社はトルコの製薬会社で、なんと創業105年という長い歴史を持っています。2012年に大塚製薬と連携して合弁会社を設立すると発表したことで、一時期日本でも注目を浴びました。
従業員数は3,700人程度で、シプラ社に比べるとそれほど多くはありませんが、100年以上も製薬業界で戦ってきており、常に最新技術を追い求めている企業です。
アイピルvs.エラ:用法・容量
アイピルとエラはそれぞれ別の有効成分を含んでおり、用法・用量に異なる部分があります。
ノルレボ錠と同じレボノルゲストレル1.5mgを含むアイピルは、避妊に失敗したセックスの72時間以内に1錠を服用します。飲むのが早ければ早いほど高い確率で避妊が成功します。72時間以内では避妊成功率が75%で、24時間以内なら95%にもなるのです。
一方で、アフターピルの中でも最新のエラは、アイピルとは違うウリプスタイル酢酸エステルという成分を含んでおり、5日以内に飲めば高い避妊効果を発揮します。3日以内に飲んだ場合の避妊成功率はなんとおよそ95%!5日以内であってもおよそ85%の確率で妊娠を阻止できるのです。
そもそもアフターピルはセックスで避妊に失敗したと気づいたら即座に飲むものなので、手元にあるのであれば5日も要らないと思うかもしれません。しかし、エラの場合はアイピルと同じように72時間以内に飲んだとすると、アイピルよりも高い確率で妊娠を阻止できるようです。
万が一数日間飲み忘れるというケースも考えると、エラを持っている方がより安心でしょう。
アイピルvs.エラ:副作用のリスク
アイピルの副作用には、
・頭痛
・閨怠感
・傾眠
・疲労
・下腹部痛
・浮動性めまい
・乳房圧痛
・吐き気
などが報告されています。
一方でエラでは、
・嘔吐
・下腹部の痛み
・頭痛
・めまい
・倦怠感
などがあります。
いずれも製造管理が徹底して信頼性の高い製薬会社で製造されているので、安全性は高いといえます。しかし、アフターピルはホルモン含有量が多いために、低用量ピルと比較すると副作用が起きやすいので、吐き気や嘔吐などの症状が起こることを想定しておいた方がよいでしょう。
アイピルvs.エラ:価格
アイピルは1箱あたりの相場がおよそ1,500円。一方でエラは1箱で5,000円前後します。エラは5日間というアイピルより長い猶予があるということから、価格が高いのでしょう。
アフターピルは病院で処方してもらうと、保険が適用されずに1万円以上かかることがほとんどです。価格を重視して通販サイトを利用する方はアイピルを買うことが多いようです。事後避妊においてより安心できるアフターピルが欲しいなら、エラの方がオススメです。
アイピルとエラ、結局どっちがいいの?
アイピルとエラをいくつかの視点から比較しましたが、それぞれインドとトルコの優れた製薬会社で製造されており、重い副作用のリスクも低いため、安全面では問題ありません。
同じ成分が使用されており、1回の避妊で摂取する容量も同じであるため、効果に関しても同じくらいだと言えます。
価格に結構な違いがありますが、エラはやはり5日間の猶予があり、さらに服用するまでの時間が同じであってもアイピルより高い避妊効果が期待できるので納得できます。
価格を重視するか、安心を取るかでどちらのアフターピルが良いか決めると良いでしょう。